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話は変わり場所は三大陸に属するクラード大陸。
クラード大陸はアリシナ大陸の左隣にあり、様々な自然が多い大陸で有名である。東と西は大陸間の移動や貿易の役割を果たす港町があり北は山岳地帯と森林地帯。そして南には太陽が照りつける広大な荒野が広がっている。
そして今その荒野を移動している人物がいた。
性別は男で体格は大柄で黒髪に小麦色に焼けた肌、熱さ対策に布を纏い背中には萎んだ大きな皮袋を背負い腰にはすでに飲み干したと思われる空のアルミの水筒を3つほどぶらさげていた。
腰にぶらさげておいたアルミの水筒の蓋を外し右腕で口元に寄せてみるも流れてくるのは水分補給にすらならないほんの2、3滴の水だけ。
「‥‥これで食糧だけじゃなく水も尽きたか。」
もう残っていないと分かっているはずなのに期待して飲んだがやはり水筒の水が空な現実に落胆する男。
暑さで体力も気力も尽きつつあり移動も歩くというよりかはほとんど引きずっているような状態であった。
上空にはジリジリと照らし続ける太陽、周囲には草木は1本もなく執拗に体力と水分を奪う熱を退ける遮蔽物は存在しない。
しかも暑さ対策の為に用意された布は体から滲み出した汗をタップリと吸い込んで重さを増しかえって邪魔になる始末。
最初は意外と重宝していたが今は正直重いだけで移動の妨げにしかならない。
今までその都度絞って対処してきたものの限界にきているのが現状だ。
だが取り払ったら直に日光に晒されて体力が更に早いペースで奪われて行き倒れになりかねない。
「町はまだ見えないのかよぉ‥‥。水をくれぇ‥‥。」
男は辛うじて呟くがもはや泣き言に近く、その泣き言さえ聞いてくれる存在すらいない。
見渡しても景色は一向に変わらないのだから泣き言も言いたくなる。
しかし、現実は非情で泣き言を言ったところで何も変わりはしない。
歩かなければ変わらない。
歩けばいずれか町が見つかるはず。
それだけを信じて男は歩き始めた。
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