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まぁ…そんなことより今は声をかけている老人(仮)に交渉しないとな。
正直俺の生死に関わる問題だし。
このまま黙っていると死体として荒野にリリースされかねん。
…それだけは御免だ。
自身の愚痴を一時遮断し、意識を老人(仮)に向ける。
「おぉい、大丈夫かぁ?」
再度老人(仮)が少し強みを帯びた声で話しかけてくる。
正直何度も声をかけてくれるその優しさにマジで感服するよ。いや、本当にさ。若者だったら返事がないなら即放置だから。
さて、そろそろ返事をしなきゃな…。
言うんだ。
「水をください。もう限界なんです!」って。
空気を吸い込んで体の底から言葉を出す準備をする。
そして体に貯まった空気を吐き出して叫んだ。
さぁ、言うことはわかっているな!俺!
せーの!
「返事がない。ただの屍のようだ。」
…
…
…
…
やっちまったよ、俺のバカァァァァァァ!
こんな所でウケを狙っちまったよぉ!
…ヤバイ!…ヤバイ!これは本当にヤヴァイよぉぉぉぉ!
地面にキス状態だけどわかるよぉ!
老人のすっごい困惑している表情!
この静寂凄く辛い!
お願いだから何か言ってよぉ!
あまりにも絶望感に思考回路がメチャメチャになる。
しかし、絶望感に対して体は動かないため息絶える寸前の虫のようにピクピク動くしかできない。
もう終わったなともはや諦め半分な状態だった。
…
…
…
しばらく続いた絶望感の後ふと思いつく。
よく考えてみろ。
相手は老人(仮)なんだ。
何度も声をかけてくれた優しい人物ならこれがジョークだと理解して言うはずだ!
笑いながら優しい口調で「‥そんなジョークはいいからワシの家に来なさい。」とな!
年故の人生経験にものをいわせて言うさ!絶対言う!
さぁ、言うんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!
しかし、そんな無理矢理こじつけたような希望は現実にはなるわけはなく…
「よしよし、ただの屍かぁ…。ワシのお得意のテレポートでぇ飛ばしちゃるわぁ!」
…やはり現実は非情である。
「それだけはらめぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
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