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そこにはやはりというかこの街の主流の石造りの2階建ての建物があった。
入口には大きな木製の看板があり「漢の宿屋」と堂々と書かれていた。
「宿屋だったのか…てか、名前危な…痛っ!」
建物を見て宿屋と理解した瞬間落下する感覚と衝撃が体全体に走った。
何が起きたのかはすぐに分かった。
老人…いや、ジジィが俺を降ろしやがったんだ!
その証拠に今俺は地面に仰向けに倒れている。
「何をしておる。さっさと立ち上がらんか?漢ならできるはずじゃろうに。」
地面に仰向けに倒れている俺を上から見下ろしてジジィが話しかける。
ムカつくわぁ…言い方もムカつくがこの位置関係にさらにムカつくわ。
…よし、言ってやるよ。あぁ!言ってやるさ!
「…立ち上がらないんじゃなくて、あんたのかけた回復魔法が弱すぎて立ち上がれないんだよ!忘れたのかよ!」
…どーだ、言ってやったぜ。
なんとか言ってみろ!
「あー、すまんのぉ。歳のせいかすっかり忘れておったわ。」
…こいつ認めやがった!
やっぱり忘れていたんだな。
この返事を皮切りに不満をぶつけるために顔をジジィの方に向けて叫ぶ。
「…このジジィ。こんな時だけ歳を言い訳に使いやがって。だいたいあんたは「ワシのお得意のテレポート魔法で「本当にすいませんでした。私はゴミです。だからそれだけは勘弁してください。ごめんなさい。」」」
…屈服しました。
…ちくしょぉぉぉお!
このジジィィィィィィィィィィィィ!
しかし、まぁジジィの回復魔法がこの程度ならこれが限度だよな。
…
…仕方ない。このまま立ち上がれないのもなんだし。もう回復魔法使うか。
俺は上半身をなんとか起こし背負っていた萎んだ皮袋に手を入れる。
中には必要なものが結構な量入っており、見た目は萎んでほとんどないように見えるのだがこれが意外とあるのだ。
袋を漁る手に様々な感触が伝わる。
「えーと、これじゃない。これでもない。」
手に伝わる感触から自身が今最も必要なものを判別する。
何回もやっているせいか手に伝わる感触だけで何に触れているか判別ができるようになっていた。
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