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ある石造りの建物の中。
中は壁や天井は石造りだが中の装飾品やテーブルなどは古い木製のアンティーク調で統一されている。
壁や天井の無骨さと装飾品などアンティークさがなんとも言えない雰囲気を醸し出していた。
だが、そんな雰囲気も店内のバーカウンターにいる男には関係なかった。
なぜならその男は非常に空腹かつ喉の渇きに苦しんでいたからだ。
目の前には大きな皿に絶妙な焼き加減で作られたステーキに新鮮な野菜が添えられ、その横に大きめのグラスに冷えた水が注がれている。
ステーキの香ばしい香りが鼻腔を刺激し、表面に水滴が出ているグラスの冷たい水を乾いた喉が欲する。
そんな状況で頭の中はたった一つのシンプルな考えが支配していた。
「目の前の食べ物と水を食らえ。」
右手にナイフ、左手にフォークを構え、
戦闘態勢に移行する。
少し間を空けると右手が先に動き出し肉厚のステーキを綺麗に五等分に切り分ける。
そしてすかさず左手のフォークで切り分けたステーキを口に頬張り、口を上下に動かして咀嚼し味を堪能する。
中の肉を飲み込むためにナイフを置き、フリーになった右手でグラスを乱暴に掴み中の冷たい水を口に注ぎ込む。
この一連の行動にかかった時間は10秒。
とてもだが人間離れしているとしか言いようがない。
男には反応はない。
ただ男は黙って異常なスピードを維持しながらステーキと頬張る動作と水を飲む動作を繰り返していた。
少し経つとグラスの中の冷たい水も大きな皿に盛られていたステーキと野菜が消えていた。
食べ終えると体全体を伸ばして叫ぶ。
「プハァ!生き返ったぁ!」
店内にステーキを食べ終えた男の声が響いた。
「スゲェうまい!この料理にこの水、今まで味わったことがねぇよ!」
今俺は泣いていた。
あまりにも強烈な喉の渇きと空腹に耐えた後のジジィの料理とこの街自慢の天然水の味に感動したのだ。
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