予言の始まり

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そんな中、戦火の炎に包まれてゆく街を一人の男が走っていた。 その男は鎧で身を固め、背中には自身の背丈ほどの大剣を背負っていた。 ガシャガシャと鎧同士がぶつかり合う音をたてるその足取りは速く、青ざめたその表情からは何か鬼気迫るものを感じさせていた。 だが、この速い足取りや鬼気迫る表情は誰かを助けに行くなどの善意によるものではなくこの男自身の助かりたい一心によるものであり、所詮この男も他の逃げ惑う人々と同じく他人を蹴落としてまで滅ぼす脅威から逃げてきた人間らしい醜い部分を露にした人物であった。 「あり得ない」 息を切らしながら走る男は何かに取り憑かれたようにその言葉を何度も呟き続けていた。 それほどこの男には自信があったのだ。自身の実力とそしてこの国の軍隊…騎士団に。 戦火の炎に包まれている国のその名は「ガルディア」。 世界を構成している3つの大陸の1つで東に位置するアリシナ大陸の大国である。 アリシナ大陸には幾つかの国があるがその中でもガルディアは大陸の5分の1を領地とする大国である。 またガルディアを守護する軍隊である騎士団は統率力が高く、個々の実力が優秀であることで有名だった。 戦争時代にはその規模の大きさや強さ、攻略の難しさから難攻不落の国と呼ばれ他国に恐れられていた歴史もある。
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