予言の始まり

5/14
前へ
/69ページ
次へ
竜の首を討ち取ったこの男は戦争時代に多くの戦場で幾つもの功績を挙げており、また戦後でも幾多もの魔物を討伐した経験から魔物の種類や対処法を知っているため正直魔物相手なら負けるつもりはないと考えていた。 故に自身の実力に対して絶対の自信があった。 そして今回も大規模の魔物の群れによる襲撃だと予想していた。 多くの魔物を討伐してきた自分なら、騎士団なら余裕で予言なんぞ覆せるとまるで勝利が約束されたかのように振る舞っていたのだ。 だが現実は男の考えをいとも容易く打ち砕いた。 なぜなら破滅の予言の時間に現れた存在は自分たちの想像の範疇を越えていたからだ。 予言の時間に現れたその存在は一言で言えば闇。 人の形を型どった黒い闇に紅く光る瞳。 それは多くの魔物を討伐してきた騎士団も知らない未知の魔物であった。いや、今思えばその存在が魔物であったのかも定かではないだろう。 その闇は騎士団の放つ洗練された剣術や魔法をものともせず、破滅の予言に従うように国の人々の命を貪り喰らい尽くした。 何の表情も見せなかったが襲い来る闇はこの国の人々を一人も逃がさないような雰囲気を醸し出しているようにも感じられた。 攻撃を与えても何も反応もなく襲い来る闇の不気味さに本来国を守護する立場である騎士団は恐怖し始めた。
/69ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加