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世の中にはどうも、怪異に遇いやすい人間というのがいるようですね。 そういう、怪異に遇いやすい人間ってのは、 ‥感覚が鋭敏で、柔らかいアタマをもってて、異形の存在をも容易に許容できる‥若い人たちのことだと思ってたんです。 だけど、それは違ったようです。 ワタシは考えるんです‥思い出すんですよ。 なんにも知らなくても、すべてを克明に見ることができた‥若いときの視界のことを。 若い頃は、目に写るすべてのものがハッキリしてました。 目に飛び込んでくる、さまざまな色やカタチ。 種類や名前もわからない、木々や花や雑草、虫やなにかまで。 なんに使うものなのか意味や仕組みもわからない、機械や道具や、なんやかや。 それこそ、そんなことを考えるいとまもなく‥無際限に飛び込んでくるんですよ、世界が。 空気の厚みとか‥蒸気のツブツブ、微細なカスミの揺曳まで。黒々とただ、か黒い、闇だとか。 ‥なにも知らなくても、世界はありのままに、この目に映ってたんですよ。 ですけど‥事故に遭ってから、かわってしまいました。 ワタシ、顔面を打ったんです。ええ、事故で。
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