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3 ‥ね。あぶないでしょ? ホントにね、あやういんです。 ワタシはもうクルマをね、運転するのは、やめようと思ってるんです。 ついこのあいだのことなんですけどね‥免許の更新には、通りました。 単純な視力でいえば0.8あればいいワケですから、眼鏡を誂えなおせばいいだけです。 ですけど、とてもいけません‥。 その日はまた、傷ついた方の目のなかに‥鉤裂きのような線が、またあらたに引かれた日でした。 しばらくすると‥気づきました。 目をお陽さまの方に向けると、その時だけ‥ルビーみたいに、光が紅く染まるところがあります。 あの、鉤裂きのような線が見えたところです。 出血しているんだろう、と思いました。 まだお昼前だったですけど、景色からね‥なにか、滲み出しているような。 気付けばいつの間にか視界の全体が黄ばんでいて、ホントウに得たいの知れない‥紅の‥夕焼けに迷い込んだようでした。 まあ、まえを見て、ちゃんとね。運転してたんですけど。 でも、黄昏どきはね‥逢魔が時というでしょう? ‥眼球みたいな丈夫な臓器から出血してるんです。 もしかしたら、脳の中でも同じようなことが起きてるのかもしれない‥それくらいのことは考えた方が良かったのに、 ワタシときたら、 まるで黄昏のように黄ばんだこの街で、幽霊と遭遇してしまうかもしれない‥なんて。 オカルトな恐怖に、背筋を寒くしてたんです。 バカでしょww ‥じきに、お昼の時報が田舎町に鈍く響いて、ワタシはなんとなく安心しました。 仕事は1日休むことにしてましたから、はやく家に帰って、ゆっくり食事をとろうと思いました。 ‥そのときです。 見えてる視界のなかから、不意にあらわれたんです。 『アレ』がね。
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