止まらぬ唯我独尊

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  「稼げるうちに 一生分稼げば勝ちか、 って思い直しただけだ」 「……才能ある人は 言うことが違うなあ」 「はん、売れるもんが 人と違うだけの話だ」 なんとなく自嘲めいた笑いを落とし、 拓海さんは助監督さんに呼ばれて セットに向かった。 暗がりに残され、 ぼんやり彼の軍服姿を 眺めていたあたしの隣に、 九鬼さんがやってくる。 「お疲れ様です」 「……あ、いえ……」 九鬼さんはあたしを まじまじと見下ろして、 目を細めて笑った。 「どうですか。表の仕事しますか」 「えっ、いや…… 勘弁してください……」 「そうですか、 けっこう似合うのにもったいない」 嘘か冗談か判らないようなことを 言いながら(本当だとは思えない)、 九鬼さんは疲れた溜め息を漏らす。 .
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