俺達の騎馬戦伝説

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帰り際、ジゴローは俺達に日々のノルマを課した。 「毎日スクワット200回、腕立て伏せ200回! ええな!!」 「200回でええの? けっこう少ないのぅ」 そう言い合っていた沖田と隆。 「……マジで言うちょる? それ」 マゾに違いない。 体育会系の奴らなんて、みんな大マゾだ、絶対だ!! 「それから、この特製ゴムボールをお前らに二個ずつ授ける。 名付けて『にぎにぎボール』! 常時両手でにぎにぎして、片時も離すな。ええな!!」 ……いちいち名付けるなよジゴロー。 ゼロなセンスが、いっそ清々しいぜ……。 山下先輩が言う。 「そのタコ大将、イケるで。 反射神経だけは異様にええ。身体の軟さも尋常じゃねぇ。マジで、馬次第じゃ。 大将、任せたで」 こうして、前代未聞の二年生文化部大将を擁する俺達赤組の、 蓋を開けなきゃ皆目わからない騎馬戦の火蓋は、 まずは俺達の猛特訓で、切って落とされることになったのだった。 とは言いつつも。 やってられっか、『巨人の星』じゃあるまいし! 俺達の目的は、ミステリ研の存在アピール、あわよくば新入部員の確保だ。 勝とうが負けようが、いや、日々研鑽を積む運動部の奴らに、勝とうなんて思っちゃいない。 とにかく、大将戦の晴れ舞台で林が前口上を成し遂げれば、 目的は達成されるんだ。 お約束のサボりを決め込む気満々だった俺は、 また新たに、騎馬戦という伝統行事の恐ろしさを知ることになる。 翌朝、登校すると。 校門で、グラウンドで、廊下で、知らない三年生や一年生から声がかかる。 「赤組勝利はお前らの肩にかかっちょるで!」 「期待してます、頑張って下さい!」 「ノルマ、こなしちょるか~」 「……はあ。どうも~……」 クラスでも。 「調子はどうか、高橋ぃ、沖田ぁ」 「腕立て伏せ、やりよるんじゃろうの?」 「授業の合間合間にちょっとずつやれぇや。ワシ数えちゃるけぇ、ほらほら」 「いや、その、おかまい無く~」 執拗なおかまい有り有りの中、 気がつけば俺と沖田は毎日、昼休みのみならず、 授業と授業の間の貴重な休憩時間にまですべて、 クラスメイトの掛け声のもと、腕立て伏せとスクワットを20回ずつ披露する羽目に陥っていた。 しかも、それだけでは済まなかった。
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