俺達の騎馬戦伝説

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極めつけはホームルームだ。 担任の数学メガネがのたまった。 「高橋、沖田、授業中はにぎにぎボールを離さんように。 職員会議の結果、体育祭まで特別に許可するけぇの。 っちゅーか、絶対離すな! 鉛筆なんぞ持たんで、いつも両手でにぎにぎしちょけ、ええな!!」 んなアホな!! それが職員会議の選択か!? 沖田が口を開いた。 「化学電気の先生の授業もあるけぇ、そん時はさすがにできんです」 おお、ナイス突っ込みだ、沖田! 「いや、全教科承諾済みじゃ。 化学電気の奴らはいけ好かんが、 我が工高にゃぁ、敵に塩を送ることをためらうような、武士道に反した教師はおらんけぇのぅ!」 ……どこが武士道だ、神聖な武士道を歪曲すんなよ、おちゃらけ教師ども! 騎馬戦を少しでも面白くしたいだけだろ、決まってる! 「授業のことは心配せんでええ、 体育祭の後で全機械科教師が、全身全霊で補習しちゃる!」 ……そんな全身全霊、要りません…… 1時間目、現代国語。バーコード藤井。 「沖田! 高橋!」 「うゎ、はははいっ」 「にぎにぎしちょるか?」 「……」 俺と沖田は黙って、にぎにぎしている両手を上げて見せる。 「よしよし。 この努力が、いずれ実となる花となる!」 「……」 2時間目、実践英語。おミズ涼子女史。 「How are you,everybody! OKITA,TAKAHASHI,Stand up!! Are you NIGINIGIing?」 「……Yes,I am.」 「me,too……」 「Oh,excellent!!」 「「……」」 3・4時間目、原動機実習。メカ熊。 「今日はのぅ、エンジン解体して構造を頭に入れるで! 後で自分で組み立てるけぇ、心してかかれ! あ、沖田高橋、お前らはこっちじゃ、このガソリン発電機。 にぎにぎボールは手放してええ」 「! やったーっ!!」 「まずこの紐引っ張って、エンジンかけぇ。握力と背筋の訓練じゃ。 ま、なかなかかからんと思うけどのぅ、 あ、高橋は左手でやるんど!」 「……」 3時間目じゅう紐を引っ張りまくったが、エンジンはかからない。 「ぜぇぜぇ……先生! 絶対なんか細工しちょるじゃろ!?」 「ふはははは! お前らの情熱があれば、必ずかかる!! かかったら、こっちの作業に合流させちゃる。 見事かけてみぃ!」 「くっそぉ~!!」 エンジンは、ついに4時間目も、かからなかった……。 ぜぇぜぇ。
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