俺達の騎馬戦伝説

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「じゃが、まずは包囲網を抜けてからじゃ。ワシが突破口を作る」 「山下先輩!?」 「青の包囲網、もう少し近づいたら二重になるじゃろう。 そうなったらさすがに抜けられん。一重のうちに仕掛けるで!」 斎藤先輩も楽しそうに頷く。 「山下、青のあそこ、柔道部の一年が2騎並んぢょる。ちぃと可哀想じゃが、あそこを潰そうで。 周りの2・3騎もきっと群がって来る、そしたら隙間が出来る」 「タコ、そこを一気に突っ切ったらすぐに号令じゃ。 逆に、ここに固まっちょる青の20騎を、外から囲んぢゃれ!」 「はいっ!」 どうした、林!? なんか凛々しいぞ!? 妹に見られている時の林は、どうやら兄の威厳を保とうと必死らしい。 思わぬ百人力の味方だよ、理沙ちゅゎん!! 「古賀、野村、吉田、しばらく大将の守りは任せたで!!」 「押忍!」 「感謝するで、タコ!! ワシが大将やっちょったんじゃ、こんな面白い騎馬戦はできんけぇの! 行くで斎藤、一年二人の中間に突っ込め!! 両手で二人とも『落とす』けぇ、馬を頼むで!」 「任せぇや!!」 山下先輩の騎が俺達の前からスッと離れ、 代わりにもう一人の副将、古賀先輩の騎が、俺達の前にずれて来た。 「『落とす』んかい」 古賀先輩は苦笑い、 野村・吉田両参謀も困ったような呆れ顔だ。 「え、『落とす』って、馬から落とす、んじゃ?」 尋ねた俺に、答えず笑う古賀先輩。 代わりに、沖田が口を開いた。 「絞めて気絶させる、って意味じゃろ」 「へ!? 山下先輩に限ってまさか! 意識なくして馬から落ちたら、さすがにそりゃヤバいじゃろ!?」 左手の野村先輩が口を開いた。 「いや~普段はホンマに優しい奴らなんじゃけど、 キレたらワシらじゃ止められん。 すまんのぅ、もしかしたら失格じゃ。 まあ落ちても一瞬じゃけぇ、心配すんな」 「は……ははは……キレてらっしゃるんですか、アレは」 古賀先輩のクスクス笑いが、止まった。 「行くで!! 沖田、この騎の後をピッタリついて来い!」 動き出した古賀先輩の背中が、離れて行く。 「? 沖田どうした、早う行け、抜けるで!」 「嫌じゃ! 敵に背中は見せられん!!」 「……は!?」 新撰組かお前は!! 不動の構えをここで見せるな、よそでやれ、よそで!! 「お前の背中は見えんわアホウ、見えるんはワシらの背中じゃ!! 行け!!」 隆の絶叫に押され、両脇を参謀騎に守られて、 俺達は走り出した。
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