俺達の騎馬戦伝説

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囮作戦が裏目に出た形の青組は、 囮の騎を捨て石にした分、当然団体戦の残騎数は赤組より少なかった。 しかし案の定、山下騎の絞め技は反則とみなされ、 団体戦の軍配は青組に上がり、 山下副将騎は五将戦に出場停止となった。 「すまん、タコ大将。ついキレてしもうてのぅ」 申し訳無さげに謝る山下先輩。 「はは、練習の時にキレていただかなくて、助かったというかなんというか……」 確かに、練習でいつもアレだったら、マジで命がいくつあっても足りんかったよな、林……。 辛抱強く林の相手をしてくれた冷静な山下先輩を思い出すにつけ、 『血沸き肉躍る』騎馬戦本番の恐ろしさが身に沁みるな……。 でも、山下先輩が行ってくれなければ、包囲網をあんなに簡単には抜けられなかった。 やっぱり、すげぇよな……。 五将戦は、時間制限なしで勝負がつくまで行われる。 大将を中心に、両脇に二人の副将、その外側に二人の参謀が、横並びで整列して、 相手と向かい合う。 まずは参謀戦だ。 各組二人の参謀が、それぞれ同時に一騎討ちを開始する。 二組の対戦に決着がついた後、 同様のルールで副将戦を行う。 ま、今回、山下騎の相手は不戦勝だが。 そして最後に大将戦、という流れだ。 参謀の前口上が始まった。 「我こそはぁーっ! 青組参謀ぉーっ! 柔道部ぅーーっ、 3年4組、三井ぃー義則ーーっ!」 「我こそはぁーっ! 赤組参謀ぉーっ! 柔道部ぅーーっ、 3年1組、野村ぁー祐也ーーっ!」 「我こそはぁーっ! 青組参謀ぉーっ! 柔道部ぅーーっ、 3年3組、藤原ぁー亮ーーっ!」 「我こそはぁーっ! 赤組参謀ぉーっ! 柔道部ぅーーっ、 3年1組、吉田ぁー秀樹ーーっ!」 予想通りの、柔道部三年生対決だ。 法螺貝が鳴る。 「「「「いざ尋常に、勝負ーーっ!!」」」」 激しい差し手争いが始まる。 柔道なら普段は襟や袖を狙う差し手だが、裸の騎馬上で狙うのは、 やはり腕。手首。 吉田先輩、野村先輩とも小柄だが、 反射神経は山下先輩も敵わないと言われている。 上手く相手を引き付けたところでかわし、深く相手の腕を掴んで引き摺り落として、 2騎とも勝利をおさめた。
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