俺達の騎馬戦伝説

5/26
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「そこで、じゃ。今年はワシも腹を括った。赤組騎馬戦の大変革じゃ!! よう聴け! 名付けて『逃げて逃げて逃げまくれ戦法』!!」 「「……ダサっ!」」 「じゃからこそ!! メンツある三年生に、そんなことはさせられんのじゃ!! 文化部で、後輩もおらんお前らを見込んでの、大抜擢なんじゃ!! 頼む!!」 ジゴローは、隆の肩を掴んだまま、ガバッと頭を下げた。 林の腕を掴んでいる柔道部の猛者二人も、同じく最敬礼だ。 「「……」」 ちょ、待てぃ!! どこが大抜擢だ!! なんちゅー滅茶苦茶な理屈だよ! 崇高な柔の道はどこへ行った、ジゴロー!? ってか、そんな戦法で勝てるとは、とても思えないんですけど、ショージキな話。 隆、言ったれ!言ったれ! 「……面白そうじゃん、先生」 な、なにぃ!? た、隆!? 隆は、めったに見せない不敵な笑みを浮かべていた。 「要するに、『柔よく剛を制す』でヤられて来た訳じゃろ、今まで。 さらにそれを上回る『柔』か……。 ミステリ研の血が騒ぐのぅ、林、広樹! そう思わん?」 「お、おい隆……」 「よし、部長決定じゃ!! ワシら文化部の雄ミステリ研が、今年の騎馬戦、旋風を巻き起こすで!!」 「ええーー!!」 ……そうだ。痩せても枯れても、元はバリバリ体育会系野球部主将……。 血がたぎったのか!? たぎっちゃったのか、隆!? ジゴローと、がっしと固い抱擁を交わす隆を横目に、 俺と林は顔を見合わせて、お互い真っ青になっているのを、ただ確認し合ったのだった。 「カンベンしてくれぇや隆……。無茶すぎるじゃろ、大将とか」 ジゴロー達が意気揚々と引き上げて行った後の図書室で、 俺と林は意気消沈していた。 「まあまあ。勝算はある!」 「ある訳ねぇじゃろ!!」 珍しく、林が噛み付く。 そりゃそうだ。林にしてみりゃ死活問題、命懸けだ。 負けたりしたら、敵どころか、味方からの袋叩きも目に見えている。 「そう悲観したもんでもねぇで。 林には、誰にも負けん武器があるじゃろ?」 「ワシの武器……?」 「その、世紀のヘタレさ」 「……」 「胴長短足」 「…………」 「プラス、柔軟性とバランス感覚」 「……え?」 「ジゴローもなかなかやるのぅ、林の特長を見抜いちょる」 「どういうことなんかいや、説明せい、隆」 隆は得意気に話し始めた。
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!