俺達の騎馬戦伝説

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「そこで、じゃ。今年はワシも腹を括った。赤組騎馬戦の大変革じゃ!! よう聴け! 名付けて『逃げて逃げて逃げまくれ戦法』!!」 「「……ダサっ!」」 「じゃからこそ!! メンツある三年生に、そんなことはさせられんのじゃ!! 文化部で、後輩もおらんお前らを見込んでの、大抜擢なんじゃ!! 頼む!!」 ジゴローは、隆の肩を掴んだまま、ガバッと頭を下げた。 林の腕を掴んでいる柔道部の猛者二人も、同じく最敬礼だ。 「「……」」 ちょ、待てぃ!! どこが大抜擢だ!! なんちゅー滅茶苦茶な理屈だよ! 崇高な柔の道はどこへ行った、ジゴロー!? ってか、そんな戦法で勝てるとは、とても思えないんですけど、ショージキな話。 隆、言ったれ!言ったれ! 「……面白そうじゃん、先生」 な、なにぃ!? た、隆!? 隆は、めったに見せない不敵な笑みを浮かべていた。 「要するに、『柔よく剛を制す』でヤられて来た訳じゃろ、今まで。 さらにそれを上回る『柔』か……。 ミステリ研の血が騒ぐのぅ、林、広樹! そう思わん?」 「お、おい隆……」 「よし、部長決定じゃ!! ワシら文化部の雄ミステリ研が、今年の騎馬戦、旋風を巻き起こすで!!」 「ええーー!!」 ……そうだ。痩せても枯れても、元はバリバリ体育会系野球部主将……。 血がたぎったのか!? たぎっちゃったのか、隆!? ジゴローと、がっしと固い抱擁を交わす隆を横目に、 俺と林は顔を見合わせて、お互い真っ青になっているのを、ただ確認し合ったのだった。 「カンベンしてくれぇや隆……。無茶すぎるじゃろ、大将とか」 ジゴロー達が意気揚々と引き上げて行った後の図書室で、 俺と林は意気消沈していた。 「まあまあ。勝算はある!」 「ある訳ねぇじゃろ!!」 珍しく、林が噛み付く。 そりゃそうだ。林にしてみりゃ死活問題、命懸けだ。 負けたりしたら、敵どころか、味方からの袋叩きも目に見えている。 「そう悲観したもんでもねぇで。 林には、誰にも負けん武器があるじゃろ?」 「ワシの武器……?」 「その、世紀のヘタレさ」 「……」 「胴長短足」 「…………」 「プラス、柔軟性とバランス感覚」 「……え?」 「ジゴローもなかなかやるのぅ、林の特長を見抜いちょる」 「どういうことなんかいや、説明せい、隆」 隆は得意気に話し始めた。
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