俺達の騎馬戦伝説

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「やる気になってきたようじゃのう、二人とも」 次第に真面目に勝つ方法を考え始めた俺と林を覗き込み、 隆がニヤリと笑った。 「そうと決まれば、早速練習じゃ、林!!」 「へ? な、何を?」 「何って、決まっちょろうが! 一騎討ちの前口上じゃ!」 「……まえこーじょー?」 隆はいきなり立ち上がり、腰に両手を当て脚を踏ん張り、応援団ばりの声を張り上げた。 「『我こそはぁーっ! 赤組大将ぉーっ! ミステリー研究会ぃーーっ、 2年2組、林ぃー武彦ーーっ!』 ほれ、言うてみい」 「そんなことできん!! ……ワシ、武彦じゃのうて龍彦じゃし」 「んな細かいこと気にすんなぃや、練習練習、げへへ」 「口上とか、絶対無理じゃけぇ!!」 「……隆。目的はそこか!?」 「今頃気づいたかバカめ! ミステリ研の部員倍増、これで間違いなし!! わっはっは!!」 林はすでに涙目だ。 「西ぃ~……」 「大将戦に名乗りの口上無しなんて、大将の名が廃るで林!! 何事も経験、経験!」 「……高橋ぃ~」 「……尻込みする前に、まずはチャレンジじゃ林!!」 「高橋まで!?」 これは部員獲得の千載一遇のチャーンス!! 部員不足で同好会落ちした我がミステリ研も、これで晴れて、元のように部費の貰える『文芸部』に返り咲きだ!! 林よ。ここは喜んで犠牲、もとい、ミステリ研の広告塔になってくれたまえ。アーメン。 ビビる林をなだめすかし、俺と隆はほくそ笑んだ。 翌日から地獄の日々が始まるとは、まだ知らない幸せなひとときだった……。 翌日放課後。 全部活は強制的に休みとなり、 全校生徒が青組赤組に分かれての、今年最初の体育祭作戦会議が開かれた。 正直ビビっていた俺達三人だったが、 騎馬戦の二年生大将に、異を唱える者はいなかった。 身長や手の長さが大きな利点であるにも関わらず、 青組も赤組も、五将の騎手は大抵、比較的小柄な柔道部の奴だ。 柔道で鍛えられた、相手を掴む一瞬の『差し手』には、 長身だろうが手が少々長かろうが、素人では敵わない。 相手を掴んでさえしまえば一番強いのは柔道だと、みな知っている。 大将を除く五将はみな柔道部の奴らに決まったし、 ジゴローが熱く語って柔道部が従うなら、誰も文句はない、ってことなんだろう。 赤組の大冒険案はあまりにもすんなり決まり、 騎馬の組み合わせを決めて、会議は終わった。 しかし俺達の闘いは、ここからだった。
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