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桶に水を組むと、胴着を脱ぎ始める。 「最近、出稽古はないの?」 「んー、ボチボチあるとは思うんだけれどね」 総ちゃんは桶の水をあたしに差し出すと、 「先使う?」 「ううん、先使って」 「いいの?」 ちょっと意地悪な目をして総ちゃんが問う。 「え? 何が?」 「全部脱いじゃうけど」 「!?」 真っ赤になったあたしを見て、アハハとまた笑う。 「もー! 先使う!」 先にあたしに使わせるための気遣いだと本当は知っている。 「ほら」 桶を庇の下まで持ってくると、あたしの隣にストンと座った。
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