***1861***

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「ホントにあるのかなー?」 あくる日、あたしは父さんに頼まれて、どこだかの有名な書物とやらを探していた。 そんなの自分で探してよって思うけれど、父さんは毎日朝早くから市場へ行ってしまうので日中は意外と家で過ごすことはない。 母さんはお茶の準備やら洗濯やらでこの離れと道場を行き来している。 書物をまとめてどけると、その下から本を一冊ずつ見ていく。たまったらまたまとめてどける。その繰り返し。ついでに面白そうな書物は無いかと思うけれど、物語のようなものはなかった。 「あ、これか」 ようやく父に頼まれていたものを見つけ、埃にまみれた書物をはたく。 「げほっ」 「換気もしないと」 久しぶりに入った二階の部屋で窓を開ける。階下から竹刀の当たる音がする。いつからだったか、生まれた頃から聞いていたこの竹刀の音。この音があたしは大好きだった。
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