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数曲吹いる所に、向かいの祐美ちゃんが入ってきた。祐美ちゃんはあたしより二つ年上のしっかり者。祐美ちゃんとは月に一度、甘味屋に行くのを楽しみにしている。甘味だけではなくお話も買い物も楽しみな事。普段の祐美ちゃんは子守をしていて、今日も背中に赤ん坊を背負っていた。 「やっぱりここね」 「あ、お迎えの時間ですか」 総ちゃんが気づいて祐美ちゃんを向かい入れる。 「ええ、そろそろ家に帰らせようかと思って。今日も遊んでもらってすみません」 「いえ、私も楽しくさせて頂いていますから」 いつになくよそ行きの口調で総ちゃんがかしこまる。 「えー、まだ遊びたいー」 平太が手を頭の後ろにあてて文句を言いながら草笛を吹く。 「また遊んであげるから、今日はおしまいです」 総ちゃんは子供たちを腕にぶらぶらさせながら庭の外に追い出す。ぶつぶつ文句言っていた子供たちも、おやつがあるよ、との祐美ちゃんの一言につられて「またねー!」と、外に出て行った。 「ほんと、子供って正直。たまに傷つくよなー」 おやつに負けたのが悔しいらしい口ぶりで総ちゃんが嘆いた。あたしは草笛を口にしたまま、目で笑ってしまう。
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