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急に静かになった庭にあたしの笛が静かに鳴る。 総ちゃんはあたしの隣に座るとしばらく耳を傾けていた。 プププー… 総ちゃんが、何か面白くないとでも言いたげに、手でヒョイと草笛を取ってしまった。 「ちょっ」 あたしが慌てて取り返そうとするけれど、その腕は総ちゃんの手にしっかり握られてしまう。 「総ちゃん?」 何も言わずに総ちゃんはあたしを切なげに覗き込むと 「曲はずるいでしょ」 と、腕をグイッと引っ張り、あたしの唇に触れるだけの口づけをした。何が起きたのかとっさに分からず、固まってしまう。 「ずるいよ」 唇をふれたまま総ちゃんが言うと、あたしを抱き寄せて、もう一度あたしの唇に顔を寄せた。
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