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「香坂さんと私は、先輩を応援します」
思いがけない言葉だった。
「応援?何の?」
「有森さんの事です」
「ちょっと待って」
「知ってます。有森さんの片想いって事」
「ちょっと待ってよ、美雪ちゃん」
「麗子は大丈夫だと思います。でも小百合は…」
「小百合ちゃん?」
「小百合、有森さんに告白するつもりだったみたいなんです。でもあの子、プライド高いから…。だから、香坂さんとの噂を聞いた時も彼女を呼び出したんです」
――――意外だった。芯の強い子だとは思っていたが、あのおとなしそうな小百合嬢にそんな事が出来るなんて。
「大丈夫だったの?那美ちゃん」
「はい。那美が『私は振られたのよ』って言って治まったんですけど」
「そう…」
「他の部署の子達は先輩に憧れてるから大丈夫だと思います。でも、小百合はちょっと…。注意が必要かと…」
「心配してくれてありがとう。でもね、小百合ちゃんがヤキモキするような事、全然無いから大丈夫よ。それよりあなたこそ平気なの?私にこんな事言って揉めたりしない?」
「大丈夫です。那美とがっちりスクラム組んでますから」
そう言って美雪嬢は胸を張り、にこやかに笑うと「失礼しました」と頭を下げて出て行った。
可愛いというだけで同性からヤッカミの目で見られがちだった那美嬢が、信頼出来る友を得たようだ。
美雪嬢なら間違いは無い。
――――思いもよらない事態だけど、2人の友情のキッカケにはなった、って事で納得するか。
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