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男が、国道の端に停車中のハザードランプが点滅する車の助手席ドアを開けた。
静かに車が走り出し、首都高速を右にかすめ、何も言わないのに確実に私のマンションへと向かっていく。
不思議に思い、改めてハンドルを握る男の横顔を見た。
私より、7つ、8つ、いや、もっと若いかもしれない…。という事は、20代半ば…?
言葉遣いも物腰も柔らかく、それに顔もなかなか…。
「思い出してくれました?」
いきなり聞かれて面食らった。
「え?」
「何だ。違うのか~。俺って印象薄いんだな~」
「え、えっと、あの…、ごめんなさい。どこかで会った事が?」
「休日以外は毎日会ってますよ、先輩」
「え…」
「あー、も~。あんな大変な事やらかしたのに覚えてもらえても無いなんて。俺、凄ぇ、ショックです」
「あの…」
「半年前、企画のパソコンをフリーズさせた男が居たでしょ?」
「…、あ、あ~!居た居た!えっと確か…、有森省吾!」
「はい!あの時は本当に申し訳ありませんでした!」
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