1 出逢いの章

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男が、国道の端に停車中のハザードランプが点滅する車の助手席ドアを開けた。 静かに車が走り出し、首都高速を右にかすめ、何も言わないのに確実に私のマンションへと向かっていく。 不思議に思い、改めてハンドルを握る男の横顔を見た。 私より、7つ、8つ、いや、もっと若いかもしれない…。という事は、20代半ば…? 言葉遣いも物腰も柔らかく、それに顔もなかなか…。 「思い出してくれました?」 いきなり聞かれて面食らった。 「え?」 「何だ。違うのか~。俺って印象薄いんだな~」 「え、えっと、あの…、ごめんなさい。どこかで会った事が?」 「休日以外は毎日会ってますよ、先輩」 「え…」 「あー、も~。あんな大変な事やらかしたのに覚えてもらえても無いなんて。俺、凄ぇ、ショックです」 「あの…」 「半年前、企画のパソコンをフリーズさせた男が居たでしょ?」 「…、あ、あ~!居た居た!えっと確か…、有森省吾!」 「はい!あの時は本当に申し訳ありませんでした!」
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