1 出逢いの章

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そして振り向かずに店内へと入った。 正直、まともに見られなかったのだ。 奴の顔が。情けないことに。 何を買うのか考えもまとまらないまま、とりあえず飲料コーナーへ向かい、ガラス扉の中からお気に入りの缶チューハイを2本、取り出してカゴに入れる。と、 「そのくらいなら、ほどほどでオッケーです」 まったくもって無防備だった背後から声をかけられ、びっくりして振り返ると『有森省吾』が爽やか~な笑顔で立っていた。 「あ、これお奨めです。ライバル社の新製品ですけど、甘さ控えめ、後味スッキリ」 そう言いながら勝手にカゴに入れる。 「何よ。ライバル社の宣伝までしてる訳?おたくの部長が聞いたらさぞかしお嘆きでしょうね」 「まさか宣伝なんて。でも、良いモノは良い。美味いモノは美味い。それは認めなきゃでしょ?で、それよりももっと美味くて良いモノを作る!それが俺の仕事ですから」 ――――コイツ、さすがだわ…。 「え?何か?」 「べ、別に。若いくせに結構マジメに考えてるんだな~と、ちょっと感心しただけよ」 「惚れました?」 「は、はぁ?ちょっと感心しただけって言ったでしょ。自惚れるんじゃないの!」 「ちぇっ」 ――――はぁ~、何なのコイツは。
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