2 省吾の章

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想像はしていた。が、想像を遥かに超えるお屋敷だった。 ――――こういう所で暮らすには、こういう暮らしに慣れていなければ無理だ。 お嬢様がタクシーを降りた。 俺も、運転手に待っていて欲しいと頼み、お嬢様に続いて降りた。 「ご挨拶しましょうか」 「いえ、大丈夫です。自分でちゃんと話します」 それでは、と軽く会釈をして背中を向けたお嬢様が再び振り返る。 「私、彼が今どこにいるのか知ってるんです。静岡で中学校の教師をしてるんです。もう3年会っていません。 もしかしたら彼女がいるかもしれない。そんなところへ私が訪ねて行ったら迷惑だと思いますか?」 「会いに行って、どうするつもりですか?」 「謝りたいんです。父の暴言と、逃げてしまった私の事…」 「じゃあ、もし向こうに彼女がいたら、謝るの、やめますか?」 「いえ、それとこれとは別です」 「だったら問題ないんじゃないかな?謝るべき事はちゃんと謝る。そのあとの事はそれから考えればいい」 お嬢様が「はい」と言ってにっこり微笑み、一礼すると、大きく立派な門ではなく、その横の通用口のような小さな扉を開けて入って行った。 ――――家柄がいいと大変な事も多いようだ。俺、一般家庭で良かった。暮らす事に不自由がなくても、生きる事に制限があるなんて、俺ならきっと耐えられない。 早苗さん、ちゃんと彼に会えるといいな。で、出来れば、うまくいくといい…。
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