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「ちょっと!困るんだけど、こういう事されると!」
「先輩、酷いなぁ。公衆の面前で俺に恥かかせるんですか?」
「いえ、そういうつもりじゃないんだけど…」
「じゃ、この話はこれで」
「ちょ、ちょっと待ってよ。そうじゃないでしょ!」とコンビニの前で再び押し問答。
ふと視線を感じて振り向くと、店のガラス窓に張り付くようにしてこっちを見ているカオリちゃんの姿が。
――――何で両手でピースな訳?あ~、完璧、誤解されてるな。
そのカオリちゃんのピースがバイバイに変わった。
振り返ると、またまた『有森省吾』が彼女に向かってご機嫌な顔で手を振っている。
――――駄目だ。説明は後日だ。ここは早いとこ引き揚げてしまおう。
「ねぇ。とりあえず今日の分は君の顔を立てて奢ってもらっとく。だから、その、ありがとう。じゃ、帰るから、それ、くれる?」
そう言って有森省吾が提げているコンビニの袋に手を出すと、
「重いでしょ?家の前まで行きますよ」
「大した事ないわよ、このくらい」
「これもですよ?」
と写真集の入った袋を持ち上げて見せる。
「それは君のでしょ?」
「実は俺、同じの持ってるんで。これは先輩のね」
「は?何よ、それ」
「とにかく。騙されたと思って見てくださいよ。ほんと、いい写真ばっかりだから」
――――駄目だ。完全に奴のペースだ…。
その証拠に手には写真集の袋がズシリ…。
「やっぱり重いでしょ?持って行きます」
「い、いいっ!このくらい持てるから!」
「そうですか?…じゃあ、先輩!また明日!気をつけて!」
振り向くもんか!と思っていた。
颯爽と先輩面して去ってやる!と思っていた。
なのに私の腕は、缶チューハイ入りの袋ごと、ご機嫌よろしく振り返していた…。
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