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「だ、だって、モン・サン・ミシェルに行きたがるなんて、普通、女の子でしょ？
それに車の運転を交代でするはずが隣で寝てばっかりで、しょーがねぇな～、って言ってたじゃない。それが許されるって、女の子だからでしょ？」
「ぶはっ！何だ、それ～。そんな事思ってたんだ？ずっと？今までずっと？可笑しい～」
何よ、思ったんだからしょーがないじゃない、と葵さんが拗ねる。
「ちゃんと言っとけばよかったな。あのね、これこれ」
リビングテーブルの上から写真集を持って来て見せた。
「この表紙。山岸豊の作品なんだ」
「え？」
「プロの写真家なんだよ。高校出て俺と同じ大学に入ったんだけど、１年でやめて専門学校に入り直して。
バイトしては旅に出て、ついにこのモン・サン・ミシェルが賞を取ったって訳。
奴の行く所って見事な景色ばかりなんだ。だから、長期休暇が取れると俺もくっ付いて行くの。この写真集は奴１人の作品じゃないけど、４分の１ぐらいはそうだよ」
「そうだったの…」
「だいたいさ、仮に女の子と行ってたら、わざわざ話題に出したりしないよ」
「そう言われればそうなんだけど…」
「だからさ、行かない？夏休暇使って。今年はフランスに行くって言ってるよ？」
「……」
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