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立ち上がってキッチンへ。
カウンターの上にペアのワイングラスが並んでいた。
あの時、素直になれなかった。
繋いだ手を離すように仕向けたのは他の誰でもない、私自身だ。
もう時間は戻らない。
無理に戻そうとすれば、きっと壊れてしまう。
――――壊したくないもんね…。たとえ、二度と触れ合う事が出来なくなったとしても。
お湯を沸かしながら、フライパンにベーコンと、二人分の卵を割り入れた。
1人の時と同じ、いつもの手順。
ミルでコーヒー豆を挽いていると省吾が起きた。
「ごめん。うるさかったね」
「ううん。音じゃなくて匂いで目が覚めた。凄ぇいい匂い。毎朝挽くの?」
「うん。毎朝挽くよ」
そのまま2人並んでカウンターテーブルで朝食。
「俺、朝って、インスタントのコーヒーだからさ。こういうの憧れるな~。明日からインスタント飲めなくなりそう」
「大袈裟ね。ミルで挽いて、フィルター通せば美味しくなるわよ」
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