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「ほら。2人とも、もう行きなさいよ」
そう言って背中を押した。
「え?先輩も行きましょうよ。まさかサボるつもりじゃないでしょうね。ほら、立って、立って!」
――――こいつ、人の気も知らないで!隣の那美嬢の顔を見てご覧なさいよ。私、嫌ですからね。身に覚えのない誤解で恨まれるのは!
そこで一計。
「あ、ごめん、電話だ。悪いね、先行ってて?那美ちゃん、またね」
そう言うと携帯を耳にあて、足を止めた。
「はい。相楽です。おはようございます」
じゃ、先、行きますね。
小声でそう言う有森省吾に、じゃあね、と軽く手を上げ2人に背を向ける。
数秒の後、そっと振り返った。
奴と那美嬢が仲良く並んで歩いて行くのが見える。
その姿が声の届かないぐらい離れた事を確認すると、持っていた携帯電話をバッグに放り込んだ。
――――何でこんな芝居じみた事やってんのかしら。もとはと言えば有森省吾、あんたのせいなんですからね。あぁいう可愛い子に恨まれるの、私、嫌なんだから。
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