1 出逢いの章

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「ほら。2人とも、もう行きなさいよ」 そう言って背中を押した。 「え?先輩も行きましょうよ。まさかサボるつもりじゃないでしょうね。ほら、立って、立って!」 ――――こいつ、人の気も知らないで!隣の那美嬢の顔を見てご覧なさいよ。私、嫌ですからね。身に覚えのない誤解で恨まれるのは! そこで一計。 「あ、ごめん、電話だ。悪いね、先行ってて?那美ちゃん、またね」 そう言うと携帯を耳にあて、足を止めた。 「はい。相楽です。おはようございます」 じゃ、先、行きますね。 小声でそう言う有森省吾に、じゃあね、と軽く手を上げ2人に背を向ける。 数秒の後、そっと振り返った。 奴と那美嬢が仲良く並んで歩いて行くのが見える。 その姿が声の届かないぐらい離れた事を確認すると、持っていた携帯電話をバッグに放り込んだ。 ――――何でこんな芝居じみた事やってんのかしら。もとはと言えば有森省吾、あんたのせいなんですからね。あぁいう可愛い子に恨まれるの、私、嫌なんだから。
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