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20分後――。
エレベーターを降りると社内案内版横に鎮座するフェニックスの木の陰から那美嬢が手を振っていた。
髪はふんわりセミロング。目はパッチリと色白で、小柄だがファッション雑誌の表紙を飾っていてもおかしくないほど可愛い顔立ちをしている。
社内の女子社員の中にはヤッカミからか、「カワイ子ぶってるだけよ」なんて言う連中も居るようだが、私に言わせればこの子は天然のお嬢さんだ。
たまたまご両親のどちらかが、あるいは両方が整った顔をしておられて、その遺伝子を真っ直ぐに受け継いだだけ。
「うち、祖父母も同居なんです」といつだったか聞いた事があるが、その言葉通り、おじいちゃん、おばあちゃんにも大切に可愛がられて真っ直ぐに育っただけ。
それだけなんだと思う。
彼女に野心は無い。
ただ普通に社会に出て、普通に恋をして、その先に幸せな結婚があって、生涯、家族仲良く暮らしていく。それが夢なのだ。
だから、例え生活に困らない保証や約束があっても、ただ贅沢に暮らす事が夢では無いからお犬様の紹介も断ってしまった。そういう事なんだろう。
――――たいしたお嬢さんだ。他の女子社員なら、そんな滅多にお目にかかれない好条件、飛びつくに決まっている。有森省吾も覚悟を決めて、那美嬢の夢を叶えてあげるべきね。良い奥さんになるわよ、この子。
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