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「有森さんにとって『本当に好きな人』っていうのは、どれだけ大切に想える人か、って事なんだそうです。付き合えるとか付き合えないとか、そういう事だけじゃなくて」
「何だか意味が解るような解らないような…。見てるだけでいい、って事?」
「私も最初、意味が解らなかったんです。でも、『俺だって当たり前の男だから好きな人の傍に居たいけど、その人がこっちを見てくれなければ無理な訳だから、見てもらえるよう最大限の努力もするし、他の男が近づくのも阻止する。
だけどどうしても駄目で、でも、それでその人が幸せになれるのなら諦める。
ただし、そのあと俺がその人を好きじゃなくなるかどうかは別問題だけど』って」
――――また訳の解んない事を…。今どきの男が何を言ってるんだか。それもあの顔で。モテ街道ど真ん中を大手振って歩いてるようなあの顔で。
この世の中、掃いて捨てるほど男が居て女が居て。出逢いがあって別れがあって、『君だけだよ』なんて、嘘に代われる言葉を数多く知ってる連中だけが面白おかしく恋をする。
本物と、本物に見える偽物と、見分ける術を持てないうちはいつまでたっても悲しい勘違い。綺麗事だけで恋は出来ない…。
「先輩…?」
逆に黙り込んでしまった私に那美嬢が声をかけてきた。
「何?」
「私、先輩の事、尊敬してます。憧れてます。だから、有森さんが先輩を好きって言うの解るんです。私が男だったら同じだと思うので。
だから…、先輩が有森さんとお付き合いする事になったら、おめでとうって言いたいんです。だから、有森さんの事…」
――――この子ったら、ほんとに育ちがいいというか…。
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