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下りホームへの階段を下りると、向かい側のホームから那美嬢が手を振っていた。
――――可愛い。その証拠に周りのサラリーマン達の視線が彼女に釘付けだ。1人で帰らせるのはマズかったかな。あんな狼達の中に子羊が…。
先に上り電車が到着した。
乗り込んだ那美嬢がガラス越しに手を振っている。
(気をつけてね)
思いっきり口パクで伝えると、通じたのか、右手でOKの合図を返してきた。
そこへ下り電車。那美嬢の姿は見えなくなった。
――結局あの子は奴と私をくっ付けようとしてるんだろうか。自分だってめちゃくちゃ好きなくせに、邪魔してやろうとか悪口を吹聴してやろうとか思わないんだろうか。
…思わないか。あの子は優しさとか思いやりとか、真っ直ぐな愛情に包まれて育ったんだから。
あ~、やっぱり送って行くべきだったな~。心配だ。危険がいっぱい。
しまった。携番もメアドも聞いてない。無事に帰れたかどうか、確認も出来ないじゃない。
(実は那美嬢。ああ見えて空手三段。心配無用だったのだが)
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