1 出逢いの章

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帰りに立ち寄ったコンビニでカオリちゃんに捕まった。 たまたま客が私1人だったので、店員と客、というよりも、『ハンター』と『獲物』状態で捕獲されたのだ。 「カッコ良い人ですね~。葵さんの彼氏じゃなかったら、私、ぜ~ったい一目惚れしてますよ~。っていうか、すでに一目惚れなんですけど~」 「え?」 「大丈夫ですって~。一目惚れは一目惚れだけど、人様の彼氏には近寄りません!」 「あ、いえ。近寄ってもいいのよ?」 「はい?」 「だって、彼氏じゃないもの」 「え~!またそんな事言ってぇ~」 「ほんとよ。ただの会社の後輩。たまたま会ったからついでに送ってくれただけ」 「ふ~ん?そっかな~?今どきの高校生をナメちゃ駄目ですよ~?」 「へ?ちょ、ちょっと何言ってんの?カオリちゃん?ねぇ聞こえてる?」 何やらブツブツと、そしてニヤニヤと、カオリちゃんがレジへ戻って行く。 ――――聞いてないのね、私の話…。 その証拠にレジでのお会計中、あの時一緒に居たもう1人のバイトの女の子が、 「背が高くて優しくて、おまけにあの顔!居るんですね~。三拍子揃っちゃってますよね~」と言った時、 「でしょ~。いいでしょ~。もう1人居ないかな~。葵さん!あの人、兄弟居ます?居たら連れて来てくださいよ~!」 そう言って瞳を輝かせたのだ。 若い彼女達の興味アンテナは、日々、目まぐるしく変わる。 だから、一度顔を見せただけの奴の事などすぐに過去になってしまうはず…。 ま、あまり否定して、ますます話が大きくなるのも嫌だし、今日のところはこれで、という経緯があった訳。
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