1 出逢いの章

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しばらくすると男はゆっくり立ち上がり、手のひらについた砂を払いながらこう言った。 「気は済みましたか?」と。 暗くて表情が見て取れる訳では無いが、柔らかで落ち着いた声が取り巻く風に共鳴する。 「こういう時はね、泣いたほうがいいんです。言いたい事、言ったほうがいいんです。我慢するとあとがツラい。いつまでもシコリになって、忘れられなくなるんです」 ――――何なの、コイツ。良い事言ってんだかどうだか。…でもまぁ、一理ある、かな。 男の言葉に同調し、納得しつつある自分に苦笑い。 悔しくはあるけれど、男の言う事は決して間違ってはいないと思ったから。
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