608人が本棚に入れています
本棚に追加
/395ページ
しばらくすると男はゆっくり立ち上がり、手のひらについた砂を払いながらこう言った。
「気は済みましたか?」と。
暗くて表情が見て取れる訳では無いが、柔らかで落ち着いた声が取り巻く風に共鳴する。
「こういう時はね、泣いたほうがいいんです。言いたい事、言ったほうがいいんです。我慢するとあとがツラい。いつまでもシコリになって、忘れられなくなるんです」
――――何なの、コイツ。良い事言ってんだかどうだか。…でもまぁ、一理ある、かな。
男の言葉に同調し、納得しつつある自分に苦笑い。
悔しくはあるけれど、男の言う事は決して間違ってはいないと思ったから。
最初のコメントを投稿しよう!