序章

2/6
前へ
/24ページ
次へ
 「早乙女月香、只今本庁に戻りました!」  警視庁捜査一課・久留米班のオフィスに、私は産休休暇を終えて戻って来た。 庁内は、私が在籍していた頃と相変わらず活気と賑わいを見せている。  「だから婦警さん、俺はやってないっつってるだろ」  「あんたぁ、ちぃと黙りんさいやね、黙らにゃあぴし上げるんじゃけぇね」  うん。このコテコテの広島弁は七味ちゃんだ。可愛いルックスに似合わない激辛キャラは健在のようだ。  「まぁまぁ七味ちゃん、チョコ食べさん、田部さんも落ち着いてチョコ食べさん」  かずかずのかずさんだ。 相棒のかず美さんとペアでかずかずの事件を追ってきた、かずかずの活躍はかず知れず。 肉体派のかず子さんと運転派のかず美さんは私の憧れでもあった。 山口弁『花萌ゆ』効果で流行るよ。  「美味ーい、これどこの店で買うたんね。教えてぇやかずさん」  七味ちゃんは大の甘党なのだ。  「買うてないよ。ぐる朔の手作りなんよ。あ、月ちゃん久しぶりじゃん月ちゃんもどうかいね?」  かず子さんは私に気付くとメイドインぐる朔のチョコを差し出して来た。  「久しぶりだねかず子姉さん、警部と警部補が? チョコを?」  月香的推理によると今月2月の14日は5倍ディ…じゃない。バレンタインだ……。 バレンタインに警部と警部補がチョコを? 久留米警部が警視庁の警部になってからは、本庁では圧倒的に女性率が高い。と言うより今泉八雲警視総監を除き全員が女性だ。 そんな警視庁でぐる朔がチョコを、然も手作りすると言う事は、 詰まり……。  「警部と警部補も遂に男が出来たんだ。おめでとう! と言う訳で祝賀チョコ頂きます!」  「全然違うんだけど、取り敢えず有り難う」  背後から聞き慣れた懐かしい声がした。久留米警部と丘野警部補だ。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加