第1章

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一つだけ、確かな事がある。 手首を切った程度では、人間は死にはしない。 そもそも心臓が動き、血液が脳に送り続けられたなら人間は生きていられる。 心臓が止まるか、血液がなくなるか、脳に血が回らなくなって初めて『死』ぬわけだ。 たかだかリストカット程度では出血量はもちろん、心臓が止まる事も、脳に血が回らなくなる事も、まずない。 しかし、その少女は確かに『死』んでいた。 浅く切られた手首を露骨に見せつけながら、ぽかんと口を開けて 莉子(りこ)は、死んでしまったのだ。
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