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この反応からして、ユナは四英雄の親族だってことを隠してるみたいだ。
なんで隠すのか、とかは……なんとなくわかる、気がする。私もパパとママ……四英雄の娘だから。
「もうユナの自己紹介は終わったな? じゃあ次はこっちの話だ」
そんな私の思考と、ユナのおかげで明るくなり始めていた空気に斬り込んでいったのはヴィスタ師匠だった。
……あ、目が笑ってない。これ絶対怒ってる。
「さっきも少し言ったが、勝手な行動……まして戦闘なんてしやがって。てめぇらいつそんな強くなったよ? ええ?」
うぅ、なにも言い返せない……。
私たち四人は、ヴィスタ師匠の圧力で、肩をすぼめて縮こまることしかできなくなってしまった。
「それに、模擬戦の内容も良くない。確かに今回はお前らが勝ったが、次やったら負けるぞ。元々実力じゃ相手の方が上だ、十回やったら八回は負けると断言してやる」
しかも、いつも以上に批評が辛口……。
いや、私たちもきっと、心のどこかでは同じことを思ってたよ?
でもさ、それを歯に衣着せずに直球で声に出されると堪えるっていうか……。
「ミヅキはバカ正直な正面戦闘は避けるべきだったし、カレンは詰めが甘い。ヤミナだって初見殺しの能力に頼り切っての辛勝。フィアのは致命的な采配ミス。お前が一番悪い」
あぅ……私たち全員の頭上に、両手を広げたようにおっきな石が降ってきたような衝撃がぁ……。
大聖堂の鐘なんかより、よっぽど心に重く響くよ~……悪い意味で。
色々勝手もしちゃったし、これから長々とお説教に突入するのかなぁ……そうなったら嫌だなぁ……。
……なーんて思ってたら、次にヴィスタ師匠が口にしたのは、意外すぎるもので。
「……まあ、それでも勝ちは勝ちだ。よくやったな」
ぽん、と私の頭に手を添えて……けれど目は斜め下を向いていて。
そんな風に不器用に、ヴィスタ師匠は褒めてくれたんだ。
そのたった一言で、なんだか背負ってた荷物を全部放り投げたように体が軽くなって。
救われたような、そんな気になって。
私たちは、みんな笑顔になったんだ。
「ヴィスタ師匠ーっ!」
「おわぁっ!? お、お前らなにす……やめろくっつくな離れろっ!」
私たちは、ヴィスタ師匠の名前を呼んで、一斉に飛び着いた。
勢い余って、ヴィスタ師匠を押し倒しちゃった……私たちの下でなにか言っているような気がするけど、離れる気なんてさらさらないもんっ。
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