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「あっ……」
そして私は気付いてしまった。
おそるおそる……私は自分の足元に視線を落とす。
「てめぇら……さっさとそこを退きやがれ……!」
そこには、額に青筋を浮かせたヴィスタ師匠。
……私たち、ずっとヴィスタ師匠を踏んでたみたい。
むしろなんで今まで気付かなかったんだろう。
「えーっと……ご、ごめんねっ、ヴィスタお兄ちゃんっ♪」
苦し紛れの笑顔で謝罪。これで誤魔化し……。
「……てめぇら、今日一日シゴき倒してやっから覚悟しろ」
切れるはずがなかった。
わぁ、ヴィスタ師匠、鬼の笑顔で怒ってる。
一瞬にして、全身から汗が噴き出した。
「あわわ……これ、謝って許して貰える感じじゃないよぅ……」
「う、狼狽えるなカレンっ……諦めるな、まだ手は残ってる……!」
涙目になり震えるカレンの手をぎゅっと握り、ミヅキは自分ごと勇気づけるように言葉を発する。
私もヤミナも、その次に続くセリフはなんとなく察していた。
私はヤミナと見合わせて、静かに頷きあう。
「んー……疲れるから、そんなに好きじゃないけど……このままだともっと疲れそうだもんねー」
「バカか貴様っ、疲れるとかそんなもので済めば儲け物だぞっ!?」
「とにかく私たちに残された選択肢は一つ……!」
こんなときでも、エアリは全く自分のペースを乱さない。
あのいつも自信満々なヤミナでさえ慌てふためいてるのにね。
そして私は、ミヅキも言っていた、たったひとつの可能性を示唆するのだ。
「逃げるんだよぉぉぉぉっ!」
ミヅキの叫びが訓練場にこだまし、私たちは四方に散り散りになって全力で逃走した。
「待てコラァァァァッ!」
決して振り返ってはならない。
そう、明日の光を信じて走り続けることが、今の私たちにとって最善なのだから……!
しかしほどなく全員捕縛され、ヴィスタ師匠のお説教+ハードトレーニングでこってり絞られたことは語るまでもないことだ。
……to be continue,
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