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そうして、四人で食堂へとやってきたのですが……凄まじい混み具合ですね。
授業終わりに直行しても、既にこれだけの長蛇の列が……やはり初中高一貫の名門は、食堂の人気もトップレベルということですか。
「今日も混んでるけど、まだ早く来れた方だね。この様子なら、ちゃんとみんなで座ってご飯が食べられそうだよぉ」
ほっと胸を撫で下ろしたカレンが一言呟きました。
……これより更に混み合うこともあるのですね。
フィアは初等科の頃からの常連のようですが、私は直接来たのは初のことですので……正直、驚いています。
「フィナ、みーつけたーっ」
早速その列に私たちも加わろうか……という時に、気の抜けたふわふわっとした声とともに、なにかやわらかいものが私の左腕に絡みついてきたのです。
そこへ視線を向けますと……ひどい寝癖の燻んだ鼠色のショートヘアに、同色の眠そうな瞳……学校指定の制服の上に空色のパーカーを羽織った、私たちのお友達、エアリの姿がありました。
「エアリ……お久しぶりです」
「んー……久しぶりー。カレン、ミヅキ、ヤミナもー……元気だったー?」
私と軽く挨拶を交わしたエアリは……私の腕に抱きついたまま、他の三人にも視線を向け、お声をかけています。
眠たそうな声ではありますけれど。
「おうよ、私はいつでも元気だぜっ」
「私も元気だよっ。エアリも元気そうでよかったーっ」
「ふんっ、貴様は相変わらず能天気そうだな」
ミヅキは力こぶを作るジェスチャーを交えつつ、カレンは淑やかに微笑んで、ヤミナは腕組みをして流し目に……三者三様の反応を示す結果となりましたが、エアリは僅かに……ほんの僅かに、口角を上げて満足そうな表情を浮かべます。
一瞬のことでしたので、もしかしたら私以外は気付いていないかもしれません。
「んー……エアリ、おなかぺこぺこー。はやくごはん食べよー?」
「そうですね。では、早速並びましょうか」
くいっ、と私の腕を引っ張り急かすエアリに、私もはんなり肯定同調しまして、最後尾に並び始めます。
もちろんのこと、私もお腹が空いているのです。
食堂まで来ておいて、エアリのその提案を拒絶することなど、一体誰ができますでしょうか。
楽しく皆で食事をするには……この長蛇の列という試練を乗り越えねばならないのですから、早く並ぶに越したことはありません。
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