53人が本棚に入れています
本棚に追加
私は激辛麻婆豆腐定食、カレンはサンドイッチ、ミヅキとヤミナがカレー、エアリはハンバーグセットをそれぞれオーダー……無事それらを受け取りますと、ちょうどよいタイミングで空いたテーブルへ着席します。
「命とそれに関わった全ての人々に感謝を込めて、いただきます」
「堅っ! そこはいただきますだけでいいだろー」
「それもフィナらしいけどね。ふふふっ」
私は丁寧に合掌し、食前の挨拶を致します。
……何かおかしかったでしょうか、ミヅキとカレンが一言ずつ私の発言に言及し、そのあとにくすくすとあたたかな笑いが起こりました。
その流れで、ムードメーカーを努めますミヅキがどんどん話を膨らませ、食事に明るい華を咲かせます。
そのとき、珍しくヤミナがしみじみと、一言呟きました。
「はじめて何事もなく食堂で食事をしたわ」
……?
私は思わず首を傾げます。
ヤミナはそんなに頻繁に、この食堂でトラブルに巻き込まれていたのでしょうか。
「あははっ! 確かに! それ、私にも言えることだから、その気持ちすっげーわかる!」
「あ、そっか……二人は転入生だから、最初がエアリとヤミナの喧嘩で、その次が……」
「先輩たちとのいざこざだな」
ミヅキ、カレン、ヤミナの三人がその当時を思い出して語ります。
確かに、そのエピソードはフィアから伺っていますし……やろうと思えば、その当時の記憶を引き出すことも可能です。
事実、そのワードに反応したのか、断片的ながら映像が流れ込んできます。
……まさか、ミヅキとヤミナが食堂に行った、たった二回が二回とも、とは思いませんでした。
「この食堂で出される品はどれも美味だが……ろくな目に遭った覚えがない。安価で美味しい料理を提供してくれる代償に、そういう呪いでも掛けられたのかと思ったわ」
半ば呆れたようなため息を吐きつつ、ヤミナはカレーを口へ運びます。
その言葉に反応したのは……今までマイペースに妖精たちとハンバーグセットを食していた、エアリだったのです。
「んー……でも、そういういやなことがなかったら、エアリたち、きっとこんなに仲良くなれてないよー? だからエアリは、この場所のこと……ちょっとだけ好き、かなー。これからもっともっと、好きになると思うけどー」
最初のコメントを投稿しよう!