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眼帯の女の子は、誰かに声を掛けられることなんてまるで予想もしていなかったらしく、激しく動揺していた。
隠れていない左の瞳はきょろきょろと泳ぎ回り、視点が定まらない。
「えっと……ごめんね、びっくりさせちゃったかな?」
「べ、べべ別にびっくりなどしておらぬ……ふん」
私が軽く頭を下げて謝ると、最初に返ってきたのはたどたどしい声。
けれどもようやく調子を取り戻したのか、口調は少し高圧的になり、腕を組んで仁王立ちで私へと視線を向けてきたのだった。
「そ、それで貴様等は何者だ? この私に何か……?」
「あなたと、お友達になりたいなーって思って声をかけたんだ。はじめまして、私はフィア! これから一年間、おんなじクラスの仲間としてよろしくね!」
眼帯の子はやはり警戒しているかのような、睨むような視線を私から外さない。
でも、だからこそ、私は自分ができる精一杯の笑顔で、お友達への第一歩……握手を求めたんだ。
「……くっくっく。友、か……」
眼帯の子は、少しだけ俯き、そしてわずかに笑い声を漏らした。
その目が見開かれたとき、先程までとは一線を画すような冷たく、するどい視線が私の瞳の奥を貫いた。
「この私、ヤミナ……いや、夜の眷属、ミリアンヌ・レイス・シュレディンガーに友など要らぬ。さっさと失せろ」
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