第1章

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 着替え終わったら早速リビングへ朝食を摂りに行こうとしたが、気になってその前にスマホの画面を確認した。不在着信は七、メールは十数ぐらいでほとんど既読無視している。昨日の夜に送られてきたメールは一応読んだが、なんだか返信する気にはなれなかった。気分が落ち込んでいたのだと思う。それなのにみんなからのメールは暢気(のんき)なもので、私をまた苛立たせた。だから返信しなかった。いや、みんなはいつも通りで昨日の私が違っただけかもしれない。そう思うと、なんだか良心が傷んだ気がした。みんなだって私の機嫌に合わせるのなんて面倒くさいだろうに。だから私は反省してみんなへ返信する事にした。スマホの最初のページにあるメッセージアプリを開き、それから友達グループへ返事を送った。  『みんな、ごめんねー汗 昨日眠くってさぁ返信出すの忘れちゃったわww』  私はみんなに嘘をついた。いつもの悪い癖だ。けれど、スマホから送ったメッセージなんて対して気にならないし、何より送った相手には私の本当のきもちなんてわかる訳がない。だから私はいつも自分の都合に良いように嘘をついてしまう。けれども、それがいけないことだって頭ではわかっている。どうしていつもこんな嘘をついてしまうのだろう。何か意味があるのだろうか。私は友達に心配されたくなくて嘘をつくのか。いや、きっとこれは自己満足に過ぎない。  すると二分後に一人目の子がグループに返信してくれた。  『ダイジョーブよ!忘れちゃうのなんてよくあるんだから笑』  この子もきっと嘘をついている。私への返信の早さからして、多分この子は私からの返事を待っていたと思う。私も返事が欲しい相手には、今のこの子と同じように、ついついその返事への返信が早くなってしまうのだから。相手からの、そのまた返信が欲しいがために、メールのやり取りはいつもリズミカルで私はそれを無意識に調整している。私も含めてみんなは『返信は遅くても気にしないよー』なんて口では言っているけれども、内心では一刻も早く返事が欲しい。私たちはただ、お互いに嫌われないための偽りの言葉を投げ交わしていて、本当は対して仲が良くなくても兎(と)に角(かく)孤独を避けたい。いや、私たちは一瞬の孤独でも耐えられないのだと思う。どうしてこんなにヒトリが辛いのだろう。人に合わせたって孤独はなくならないのに。
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