第1章

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 それから他の子達から返信されると、私もまた適当に返信しておいて『んじゃ、朝飯食うんでまたあとで学校でね笑』と締(し)め括(くく)った。これでスマホの充電が三㌫減った。  私は朝食を摂るためにリビングへ足を運んだ。二階から一階へと降りると香ばしい臭いがした。今日はホットケーキを焼いてくれたのだろうか。  「あら、今日は早いのねぇ」  母はテーブルに朝食を用意しながらそう言った。焼きたてのホットケーキは食欲を誘ったが、その時でも私は返事もせずに、まずは部屋のコンセントを捜した。スマホを充電してから朝食を摂ろうとした。それから母に「うん・・・」と軽く返事をした。テーブルの席に座ると、母も私の前に座り色々な事を話しはじめたが、きっと私はつまらなさそうな顔をしている。母はいつも私の将来像を語るが、私にとってその話はなんだが現実味に欠けている気がするからだ。  その時、私はまずフォークをとって、それでホットケーキを刺してナイフで最初の一切りを口に含んだ。甘い味がした。しかし、ホットケーキシロップは欠かせないと思ってやっぱりそれをかける事にした。朝食が思った以上に甘くなった。  「あなたはどんな会社に就職するのか・・・・もう決まったのかしら」  母は呟くように訊いた。私はそれに対して溜め息を漏らした。正直、就職なんてどこだっていいやって思っている。子どもの頃はよく夢を語ったが、今となっては思い出話に過ぎない。だって、今の私が「お花屋さんになりたい」なんて言ったらおかしいじゃないか。花屋なんてお店を開くだけでも大変そうだし、何よりお金もかかりそうだ。私はそこまで経済的に裕福ではないのだから、高校生ぐらいの頃になると「お花屋さんになりたい」夢をすっかり忘れていた。しかも今の時代、世の中の人々は自然の花になんて興味あるだろうか。プラスティック製の人工花の方がずっと便利で、本物の花のように虫が集まったりしないし手入れもしなくていいのだから、きっと人工花方が人気がある。世間とはそういうものだろう。人々は低コストで、手間のかからない便利なものを好むのだ。  
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