第1章

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 そのためか、私たちも大人に近づくにつれてだんだん夢を失っていく。人工花の話だけではなく、自分たちの将来も低コストで便利な生活を送るために考えなければならない。だから私は今でも自分の将来像を作れないのだろう。また、就職の話なんてされても同じ事だ。今度は大学生らしく「良い会社に就職したい」なんて夢をもったとしても、どうせあの頃と同じようにまた世間を見てはその夢を失うのだ。良い会社なんてそうそうあるものではないからだ。  だからといって将来に暗いイメージをもっている訳ではないのだから、私は世の中に流されるようにしている。何故なら、自分から進もうとすればそこには何もない事をよく経験しているからだ。世間に流される事なく自ら進むと暗いのなら、流されてしまえばいいと思う。だから私はいつものように母にこう答えた。  「今の世の中・・・・就職は厳しいよね。入れる会社なんてそうそうないんだから、とりあえず頑張ってるよ。」  母は少し困ったような顔をしたが、私の言葉を聞いて安心したようだ。  「そうねぇ、私たちの世代は第二次ベビーブームと呼ばれていて、その頃は・・・・今のあなた達みたいに悩むことなんてあまりなかったわ。」  母は溜め息を漏らした。母は確か七十年代生まれで、二十三歳の娘をもつ母親にしては結構若い。昔は色々やんちゃしていたらしくて、私を十代で産んだらしい。義務教育を受けていた頃はよく「あなたのお母さんは若いねぇ」なんて言われていた。しかし、若い母だからこそ色々話ができるから私はそれに関して不満に思った事はない。それなのに世間の人々は母に対して「とても若いのに子育てなんて大変だね」なんてよく言っていたらしい。母自身はこの事に関してはなんともないような態度をとっているが、私はなんだか気にいらない。若い母親では子育てが大変だなんていうイメージは持たれがちだが、それは間違っていると思う。何故なら私と母には大変な生活をおくった記憶なんてないのだから。寧ろ年の差が大きい親子の方が、良好な関係を維持しにくいように感じるのは私だけだろうか。
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