1人が本棚に入れています
本棚に追加
「うん、私とお母さんとでは世代が違うもん」
母にはそう答えておいた。いくら若い母に恵まれたからと言っても、やはり年の差は大きい。だから生きた時代も当然違うのだ。
それから私はホットケーキを細かく切った。そして無造作にシロップをかけ、その上に少しばかりのバターをのせた。そうしたホットケーキの一切りを口に含むと、私の口の中に広がっていた甘過ぎる感覚が和らいだ。きっと今の味加減が一番美味しいのだろう。けれども、この時の私にはこれがそこまで美味しいとは思えなかった。
朝食を済ませると、私は即座に出発の準備を進めた。手を洗って、歯を磨いて、軽く化粧をして・・・・それから台所を片付けると今度は持ち物の確認をした。今日の授業は精神分析学、カウンセリング基礎実習、西洋哲学史だ。カウンセリング基礎実習以外は三年と四年対象の講義で、私は四年に受ける事にした。何故かというと、同級生といると気が緩んで勉強も怠けてしまうからだ。授業の教室で知り合いがいない方が集中できるのだ。カバンに弁当と飲み物、それからお菓子を少し詰めると私は玄関へと足を運んだ。
「いってきます」
誰に向かってそう言っているのか、私は下を向いて呟いているようだった。母は台所で食器を片付けていた。私は少し急ぐようにして登校した。
見慣れた道のりを歩いているといつの間にか最寄り駅に着いていた。改札口が見えた。私は定期券のカードをカバンから出してそれをかざすとすぐに階段を駆け上がった。腕時計を見ると七時五十分だった。なるほど、「今は高校生の通学時間か」と思いながらこのラッシュアワーを乗り切ろうとした。
最初のコメントを投稿しよう!