第1章

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 電車に入ると私は手すりにつかまるようにして立っていた。が、途中から満員列車となり私は手すりを掴めなくなった。これから一時間も揺られながら立ち続けるのだと思うとなんだか気分が悪くなりそうだった。背後には元気よくおしゃべりしている女子高生グループが立っていた。斜め前には口を大きく開けたまま寝る若い男が座っていた。その男の前には杖を支えにして立っている老婆がいた。男の隣は座れる程のスペースは空いていたのに、どうしてあの老婆は座ろうとしなかったのだろうと疑問に思いながら、またいつのまにか大学の最寄り駅に着いていた。  電車を降りると、当然ながら家とは違う景色が映った。ひどく晴れていて眩しかったが、空にはたくさんの雲が浮かんでいた。もしかしたら雨が降るのかもしれない。そう思うと折り畳み傘でも持ってくれば良かったのにと後悔してしまった。  大学に着くと、私は食堂で講義が始まる時間になるまで待つことにした。大学の食堂は薄暗く、少しだけ埃(ほこり)の臭いがした。一限が始まるまで一〇分程残っている。私はカバンからテキストを出して前回の講義内容の復習をしようとしたが、気が変わったから次の予習をしていた。そうしている内に、食堂の西口からぞろぞろと学生が入ってきた。私は西口から真反対の隅の方にある四人掛けのテーブルを独り占めしていた。  ちなみに、食堂の西口から外へ歩いていくと約五メートルのところで市バスの停留所があり、多くの学生はそれを利用して大学まで来ている。私はバス停とは反対側にある駅から来ていて、歩いて十五分で大学に着く位置から来ている。昔はスクールバスもあったが、この町は交通機関に恵まれていたから学生は自然とスクールバスを必要としなくなった。  この大学は行き来しやすい場所にあるから、きっと他の学生もスクールバスでぎゅうぎゅう詰めにされて帰るより、友人と一緒にゆっくりして帰る方が良かったのだろう。それでスクールバスに乗って帰る学生は少なくなったためにスクールバスの発車時刻もだんだん減っていき・・・・結果的にみんな最寄り駅や市バスの停留所まで歩いて登下校するようになったのだろう。
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