13人が本棚に入れています
本棚に追加
リコリスに会いたかった。
そんな時、私はたまたま彼岸花に関する文書を読み、それからいてもたってもいられなくなり、あの場所へと急いだ。
花が咲くのは9月。
その時の季節は春が通り過ぎた頃。
時期的にあの場所に彼岸花は咲いているはずはなかったが、それでも、私は向かわずにはいられなかった。
『彼岸花(ヒガンバナ)は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草。リコリス、曼珠沙華(マンジュシャゲ)とも。全草有毒な多年生の球根性植物。散形花序(サンケイカジョ)で6枚の花弁が放射状につく。……花言葉は「悲しい思い出」「遠い思い出」』
そしてその最期の文章を私は思った。
『「思うのはあなた一人」「再会」』
私は地面に膝をついて、それからに何も生えていない土の中に向けて、言った。
「ねぇ、リコリス、そこにいるんでしょ? 私、がんばってるよ。自分が好き。でも、私のことが好きだったあなたがもっと好き。大好き。だから、いつかまた、会いましょう? また来るから。」
私は母からもらった茶色い髪を風になびかせて、それから空を見た。
空は寂しかったが、それでも青かった。
〈了〉
最初のコメントを投稿しよう!