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なぜ極東の、こんな島国に母は嫁いだのだろう。
私は周囲の子供たちとまるで違う。
だけど、白い肌も、赤い髪も、全て私の容姿を褒める言葉になる。
『お姫様みたい。』
でも、そんなの望んでない。
私はお姫様なんかじゃない。
なのに、外見以外は全部みんなと一緒のはずなのに、みんなはそう思ってくれない。
いつの間にか私のファンクラブだとかが勝手に出来た。
意味が分からない。
二人組みでしなければならない作業の時、誰もがこう言って私から遠ざかる。
『そんな恐れ多いこと。』
私は特別視されて、誰も近寄ってくれないのだ。
そして、誰も私が一人でいることに気を使わないし、気にしてくれない。
だから、私には一緒にランチを食べる友達もいない。
教師達からは協調性の無い人間だと思われ、さらに腫れ物に触れるように扱われる。
それでも、そんな私を賛美する人々の耳障りな声も、孤独な日常の寂しい記憶も、リコリスを前にするとその強烈な美しさに霞んでしまって、どうでも良くなってしまう。
私以上に美しい彼女の言葉だからなのだろうか。
リコリスにお姫様と言われるのは、なぜか心地良い。
しかし、きっとその時の私の複雑な感情が顔に出てしまっていたからだろうか。
リコリスは私の顔を見て、それから言った。
「自分が嫌いなのね。他人にお姫様と言われるのは嫌?」
「うん。」
嘘をつかない私に、リコリスは言う。
「でもね、あなたはそれでもお姫様なのよ。私にとっての。ほら、こんなに綺麗。ねぇ、私が毎年どれだけこの日を待ち焦がれているか分かる?」
リコリスは私の心を射抜くようにクスクスと悪戯に笑い、私の髪をサラサラと撫でた。
「やん。リコリス、くすぐったい。」
「良いじゃない。」
今、私の顔は多分、すごく真っ赤だ。
リコリスはずっと笑っていて、その顔を見るたび、声を聞くたびに、私の心に嬉しさが込み上がって来る。
そして、リコリスは思い出したかのように私に言った。
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