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「どうかしたの?」
「ううん。なんでもない」
私は、何にも言えなかった自分を誤魔化すようにして話し始めた。
学校で勉強したこと、自分が知っている世界のことを、地図を見ながら語って、それを聞くリコリスの反応を楽しんだ。
氷だらけの北極、南極のペンギン、アフリカ大陸の広大な自然と砂漠、南米のアマゾン。それから母の生まれた国。
「ねぇ、あなたの髪の色、もしかしてお母さんからもらったの?」
リコリスは母の国の話をしている途中でそう言った。
「そうよ。だけどね、私、自分が嫌いなの。大嫌い。こんな色の髪の毛してるから、友達、あなたしかいない。」
「そう?」
「だって、この国の人、誰もこんな髪の毛の色してないもの。」
「でも、みんな違うのが普通じゃない?」
リコリスがそう言ったとき、私はハッとしたが、それでも、私を仲間はずれにする人達を思い出して悲しくなった。
「も、もちろんそう。だけど、誰もそんな当たり前のこと、わかってないから。」
でも、それは自分にも言えることだった。
私は。
私を別の人種扱いする人たちの言葉を鵜呑みにして、自分からそう言った人々に歩み寄ったことなんて一度も無い。
いや、自分から歩み寄ったとして、上手く行くかどうかは分からないけれど。
リコリスは私の頭を撫でる。
「悩んでたんだね。でも、良いんだよ。悩みのない人間もいないもの。何に悩むかも、みんな違う。だから大丈夫。」
気がつくと私は泣いていた。
もう、髪の毛の色や肌の色の違いなんて、どうでも良いことなんだと、そう思えてきた。
リコリスが私の涙を指でぬぐい、それからそれを口に含む。
そうして優しげな表情を見せた後、リコリスは私の髪にキスをして、そのまま私をそっと抱きしめる。
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