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私は泣きながらリコリスの背中に手を回して、それからそっと力を入れた。
「リコリス、あなたがとても好き。」
「私もよ。」
リコリスは私の耳に口を寄せて、こう続ける。
「ねぇ、もう少し、こうしていて良い? あなたのこと、全て覚えていられるように。」
それからどのくらいそうしていただろうか。
リコリスが次第に強く、強く力を込め始め、苦しくなった私は喘ぐようにしてそれを止めた。
「リコリス、ちょっと痛い。」
「ごめん。」
リコリスはそう言って私を解放する。
その時、リコリスのその顔に、細やかな寂しさがあったのを、私は見逃さなかった。
「リコリス、どうしたの?」
「ごめんね。あのね。驚かないで聞いて。会えるのは多分、今年で最期なの。」
リコリスはそう言うと、寂しそうに笑った。
「もう、あなたと出会って6年になる。もう、限界みたい。あなたが大人になってしまうから。」
私は言葉を失くす。
リコリスの顔をただただ見てしまう。
突然にリコリスが言った言葉を、私は理解することが出来ないでいた。
「私は人間じゃないの。」
拒絶とは違う。
でも、なにか、絶対に越える事の出来ない壁を感じさせる声だった。
「ここは、あなたの住む世界と、私の世界との境界線。私は毎年の秋にだけここに顔を出すことが出来る。その合間に、今日と言う日を見つけた。そして、子供だったあなたと出会った。いいえ、あなたが私を見つけてくれたのかも。毎年、あなたが来てくれて、あなたと会うこの日のおかげで、どれだけ私が救われたか。でも、もう、最期。あなたは、大人になってしまうから。」
それが、その言葉が、リコリスとの別れを意味すると言うことに、私は気づき始める。
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