13人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんな……リコリス。私もだよ。私も、あなたと会えて、救われているの。会えなくなるなんて、そんなこと言わないで。」
リコリスは首を横に振った。
「どうしようもないことなの。私も、ずっとあなたといたかった。ねぇ、あなたはまるで蝶みたい。私を見つけて近づいて、私が手を伸ばしても捕まえられない。それでもあなたはそばにいてくれた。嬉しかったわ。ねえ、まだ自分のことが嫌い?」
リコリスが目から雫を流す。
それは頬を伝わり、それから赤い服に染み込んでいった。
私は言う。
「もう、気にならないわ。ううん、違う。好きになった。せっかく生まれてきた自分の身体だもの。あなたが私のこと、好きって言ってくれた自分だもの。」
「そう、良かった。それだけが心残りだったの。忘れないでね、あなたのことが大好きな私のこと。私が大好きなあなた自身のこと。もう、二度と自分を嫌いだなんて言わないで。あなたが持っている素敵なもの。あなたが自分をもっと良く知って、好きになって、これから生きていくことに必要なことを手に入れて。それから……強く生きて。いつでもあなたを見守ってる。いつか、また会いましょう。」
そして、リコリスの言葉が静かに消えて、シンとした暗闇が私を包んだ。
それが最期だった。
ふと気がつくと、私は一人で、暗い闇の中にいて、まるで夢を見ていたかのような、酷い酩酊感が私の頭を揺らしていて。
私は独りになっていた。
「リコリス?」
私が彼女を探そうとその場所を見渡したが、そこにはたくさんの赤い花が咲いているだけだった。
この花の名前を私は知っている。
彼岸花だ。
今までは咲いていたと言う記憶が無い。
だけれど、私を包むように、その赤い花達は風の中で静かに揺れていた。
私は呆然と立ち尽くし、細やかな風の中で、リコリスが髪を撫でた感触や、抱きしめ合った時の感触が身体に残っていて、その消えそうな体温を思い出し、私は泣いた。
最初のコメントを投稿しよう!