第1章

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 ゴールデンウィークなんて玉のような名前に似合わず、じめじめと雨の降りしきる四月最終の夜のこと。  僕は馬鹿騒ぎをする親戚たちの酒宴の輪にいたくなくて、特に必要ともされていないおつかいを頼まれてコンビニまでの道程をてくてく歩いていた。  深夜に差し掛かっても雨脚は衰えるところを知らず、早すぎる五月雨のごとくざぶざぶと音を立てて足元を濡らす。湿気で酷いことになっている癖毛もさることながら、靴に染みてぐちょぐちょになる雨水の煩わしいことはこの上ない。  長靴を出してくるべきだったかと後悔するが今更どうにもならないので、びしょ濡れの足はいったん意識から切り離す……ことが出来ればいいのだが。  どうにもならない濡れた足を引きずってのろのろと進む暗い夜道。  冷たく湿った空気がべっとりと肌にまとわりつき、聞こえる音といえば雨音だけで、それさえもまるで静かさを際立たせるためだけにあるように感じる。土の匂いが濃く漂い、湿った空気を更に重くする。そこになんだか、どこか生臭さが混じるような。  要するに、この道は暗くて怖くて怪談チックで、気味が悪くて怖いのだ。  昔から緑色の子供が走って行ったとか、姿の見えない足音に付きまとわれるとか、目玉に甲高い声で話しかけられるとか、そんないわくつきの道なのに、僕の家からコンビニ含む町へ降りるにはこの道しかないという、この嫌がらせかとも思える立地の悪さ。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加